「皆川博子」の日記一覧

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バルト海の三つの都市

 皆川博子の「風配図-WIND ROSE-」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリーから怪奇・幻想小説を幅広く手掛けており、今年93歳になるが、今でも現役作家として活躍している。本書は、バルト海交易で栄える十二世紀の三都市を舞台に、交易商人として生きようとした二人の少女を描いた一種の歴史小説である。  物語は1160年5月のゴッドランド島で始まる。同島はバルト海に浮かぶ最大の島であり、住人は…

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アメリカ独立戦争下の殺人事件

 皆川博子の「インタヴュー・ウィズ・ザ・プリズナー」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリーから怪奇・幻想小説を幅広く手掛けており、今年91歳になるが、今でも現役作家として活躍している。本書は、エドワード・ターナー三部作の完結編で、2012年に第12回本格ミステリ大賞を受賞した「開かせていただき光栄です」、および「アルモニカ・ディアボリカ」の続編であり、殺人を犯した罪を償うために、志願兵となっ…

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著者別インデックス:国内(皆川博子)

1.開かせていただき光栄です−DILATED TO MEET YOU− (2011.07)   https://smcb.jp/diaries/4108491 2.マイマイとナイナイ(怪談えほん 2) (2011.10)   https://smcb.jp/diaries/6360992 3.双頭のバビロン (2012.04)   https://smcb.jp/diaries/500…

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皆川博子 の 笑い姫

★3.4 元阿蘭陀通詞の子・馬場蘭之助の冒険譚。 蘭語、英語、仏語の得意な蘭之助は幕末の鳥居対江川の抗争に巻き込まれる。江戸生まれで狂月亭乱麿の名で戯作を執筆中に幼馴染の高橋作次郎(シーボルト事件で獄死した景保の子)が赦免船で帰ってくる。 鳥居の手下である 本庄茂平治を敵と狙う旅の軽業師一座もからむ。一座の兄妹は本庄からおぞましい仕打ちを受けていたのだ。 舞台は長崎から小笠原諸島へ。時の執…

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二つのU

 皆川博子の「U(ウー)」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリーから怪奇・幻想小説までを幅広く手掛けており、今年88歳になるが、今でも現役作家として活躍している。本書は著者の最新作であり、占領地からオスマン帝国皇帝への貢ぎ物とされた少年達が、不老の体を手に入れ、300年後の第一次大戦下でドイツのUボート(潜水艦)に乗り組むまでを描いた幻想小説である。  本書のストーリーは、U-Bootという…

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皆川博子の「妖櫻記  上下」。

★3.5 版社変え新装。 応仁の乱の少し前、「嘉吉(かきつ)の乱」、「禁闕(きんけつ)の変」、「長禄(ちょうろく)の変」を背景に描くホラーファンタジー。 赤松満祐の妾である玉琴を亡き者とした三条の娘・野分、玉琴の怨霊がそれぞれの息子、娘を交えて襲う。 物語は南朝の血を引く阿麻丸(あままる)と野分に仕える兵藤太の二人の若者を中心に描く。 阿麻丸は三種の神器争奪に巻き込まれ、兵藤太は前記の息…

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皆川博子の「みだら英泉」。

★3.3 出版社を変えての焼き直し版。 文化文政期に活躍した浮世絵師・渓斎英泉がどうして生まれたのか。 英泉といえば美人画と春画、最近では北斎の娘・お栄との絡みも取り上げられる。 英泉には3人の異母妹がいた、お津賀、おたま、おりよ。英泉が父を失い武士の身分を追われたのが21歳、上の妹お津賀は14歳、喰えない英泉は3人を里子に出すしかなかった。 3人の妹たちの生き方や情念が、英泉の絵に大き…

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運命が運び、連れ戻すところ

皆川博子の「クロコダイル路地(1、2)」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリーから怪奇・幻想小説までを幅広く手掛けており、今年87歳になるが、今でも現役作家として活躍している。本書は著者の最新作であり、フランス革命時代の暗黒面の血塗られた歴史を描いた作品である。  本書は、フランスのナントで貿易商を営む大ルジョアのテンプル家嫡男ロレンス(ローラン)・テンプル、フランスの帯剣貴族の嫡男フランソ…

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雷から得た知見

皆川博子の「アルモニカ・ディアボリカ」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリーから怪奇・幻想小説を幅広く手掛けており、今年86歳になるが、今でも現役作家として活躍している。本書は著者の最新作である。本書は2012年に第12回本格ミステリ大賞を受賞した「開かせていただき光栄です」の続編である。なお本書は、事件の推移とナイジェルの回想(手記)が交互に描かれる。また本書で「アルモニカ」とは、ベンジャ…

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切り離された双生児の運命

皆川博子の「双頭のバビロン」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、怪奇・幻想小説を主に手掛けている。本書は、19世紀末のウィーンで生まれ、切り離された結合(シャム)双生児ゲオルクとユリアンのその後の数奇な運命を描いた物語である。物語は、ゲオルクとユリアンの独白を中心として、時代を行きつ戻りつしながら綴られる。  物語は、ハリウッドで映画監督として成功したゲオルクが、自伝作成のため速記者のエ…

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増える屍体の謎

皆川博子の「開かせていただき光栄です−DILATED TO MEET YOU−」を読了した。著者は、今年82歳になるが、今でも現役作家であり、本書は著者の最新作である。なお、「Dilated to Meet You」とは、「Delighted to Meet You(お目にかかれて光栄です)」のもじりで、主人公達が解剖を開始する際に発する言葉である。  本書の舞台は18世紀のロンドンで、外科医が…