「中世史」の日記一覧

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若き癩王の戦い

塩野七生の「十字軍物語 2」を読了した。本書では、第一次十字軍による十字軍国家設立後、その主要メンバーが全て亡くなり、ボードワン二世がイェルサレム王位を継いだ時代から、第二次十字軍の遠征を間に挟み、イスラムの英雄サラディンにより十字軍国家の大部分が滅ぼされるまでが描かれている。  第一章「守りの時代」:第一次十字軍の兵力の大部分が、イェルサレム奪還後にヨーロッパへ戻ってしまったため、十字軍国家は…

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神がそれを望んでおられる

塩野七生の「十字軍物語 1」を読了した。本書は、「ローマ人の物語」で著名な著者が、新たに書き起こした、十字軍の歴史に関する新シリーズの第一巻であり、十一世紀末に、久しくスラム教徒の支配下にあった聖都イェルサレムを奪還すべく、カトリック教会の呼びかけに結集したキリスト教徒諸侯達の戦いを描いたものである。  第一章「神がそれを望んでおられる」:十一世紀末に、首都コンスタンティノープル付近までイスラム…

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鎌倉幕府を生んだ武家棟梁の系譜

元木泰雄の「河内源氏−頼朝を生んだ武士本流−」を読了した。著者は、京都大学大学院教授で、専攻は中世前期の政治史である。 本書は、鎌倉幕府を開いた源頼朝に連なる、後世「武家棟梁」と呼ばれる河内源氏の系譜が、必ずしも世間に流布したイメージとは異なることを論考したものである。平安時代末期から勃興した武士階級とは、貴族階級と対立する存在ではなく、あくまでも武家貴族であったこと、平清盛に連なる伊勢平氏と河…