「逢坂剛」の日記一覧

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百舌は死なず

逢坂剛の「墓標なき街」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、最近は時代小説も幅広く手掛けている。本書は公安警察小説の先駆けとなった「百舌シリーズ」の第六作である。  新聞社で編集委員に出世した残間龍之輔は、かつての上司の田丸清明から、一連の「百舌」事件の顛末を記事にする様に依頼され、その資料として亡くなった朱鷺村と洲走かりほの会話を隠し録りしたテープを提供しても良いと言われ…

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ベラドンナの花言葉

逢坂剛の「断裂回廊」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、最近は時代小説も幅広く手掛けている。本書はノンシリーズのサスペンス小説で、公安調査庁の女性管理官殿村三春の活躍?が描かれている。  本書の冒頭で、ラゴス公使館で開催されている秘密カジノの賭場荒らし事件が描かれる。大手広告会社の総務部次長の村野滋之は、行きつけのダイニングバーで知り合った鴨下郁代を秘密カジノへ連れて行く…

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東男に京女

逢坂剛の「平蔵狩り」を読了した。著者は直木賞作家であり、もともとミステリー出身であるが、最近は時代小説を手掛けろことも多い。本書は、火付盗賊改方長官長谷川平蔵、すなわち、鬼平を主人公とした逢坂版「鬼平犯科帳」の第二作で、6篇からなる連続短編時代小説集である。  「寄場の女」:平蔵は佃島人足寄場開設を提言したため、寄場に監督責任を負っており、部下の同心俵井小源太に寄場で働く人間の監視を命ずる。やが…

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逢坂剛の「平蔵狩り」。

★3.5  シリーズ2作目。6つの連作短編。平蔵は直属の与力、同心以外には己の顔を見せない。 表題作の「平蔵狩り」ではその平蔵の顔がキーとなる物語で、今回は明らかに読者への挑戦である。京で母と死に分かれた娘・おいせが、「父親は本所のへいぞう」という母の言葉を頼りに江戸へ探しに出てきた。 長谷川平蔵のところに行き着き、最後に茶室のにじり口で、見えない平蔵とやりとりする。平蔵が「江戸へ残るのか」…

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さらばイベリア・シリーズ

逢坂剛の「さらばスペインの日日」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、最近は時代小説も幅広く手掛けている。著者はスペインに関して造詣が深く、出世作となった「カディスの赤い星」他、スペインをテーマとした作品が多い。本書は、第二次大戦中のスペインを舞台とした大河スパイ小説「イベリア・シリーズ」の第七作で、シリーズの完結編であり、降伏後のドイツから日本の無条件降伏と、終戦後の日本…

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支倉常長一行の末裔

逢坂剛の「ハポン追跡」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、「重蔵始末」シリーズ等の時代小説も幅広く手掛けている。本書は、スペインに造詣の深い調査事務所所長岡坂紳策を主人公としたシリーズの第四作で、主としてスペインまたは南米と関係の深いテーマを扱った連作短編集である。  「緑の家(カサ・ベルデ)の女」:「エロール・フリンとスペイン内戦」と題する講演を聞きに来た神策は、演者を…

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縫いぐるみに仕込まれた覚醒剤

逢坂剛の「大迷走」を読了した。著者は直木賞作家であり、もともとミステリー出身であるが、最近は時代小説を手掛けろことも多い。本書は、斉木警部補、梢田巡査長の幼馴染の凸凹コンビを主人公とした、御茶ノ水警察署シリーズの第五作であり、本シリーズ初の長編小説である。  昼食に向かう途中の管理官の牛袋警視、五本末小百合巡査部長と梢田は、御茶ノ水駅のホームで駅員と揉めている老人を見掛ける。事情を聞くと老人は、…

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悲運のドイツ文学者の血を継ぐ者

逢坂剛の「バックストリート」を読了した。著者は直木賞作家であり、もともとミステリー出身であるが、最近は時代小説を手掛けろことも多い。本書は、スペインに造詣の深い調査事務所所長岡坂紳策を主人公としたシリーズの第九作である。  岡坂紳策は、同じビルで開業している弁護士の桂本と、事務所の近くで最近開業したタブラオの「サンブラ」を訪れ、次週の出演の下見に来ていたバイラオーラ(フラメンコのダンサー)の神成…

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エトロフに果つ

逢坂剛の「逆浪果つるところ 重蔵始末 7 蝦夷篇」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、本シリーズや最近では「長谷川平蔵(鬼平)」シリーズ等、時代小説も幅広く手掛けている。本書は、蝦夷地探検で知られる近藤重蔵を主人公としたシリーズの第七作で、蝦夷篇の第二作である。  エトロフからクナシリに戻った重蔵の、松前藩の蝦夷地支配の実情調査は、熾烈を極める。調査はその場所を蝦夷本島に…

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遥かなるイベリア

逢坂剛の「クリヴィツキー症候群」を読了した。著者は直木賞作家であり、ミステリー出身であるが、「重蔵始末」シリーズ等の時代小説も幅広く手掛けている。本書は、スペインに造詣の深い調査事務所所長岡坂紳策を主人公としたシリーズの第一作で、いずれもスペインと関係の深い5篇からなる連作短編集である。  「謀殺のマジック」:岡坂の許に謎の美女が訪れ、第二次大戦中に駐米スペイン大使館が、幻のスパイ組織「東」に協…

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もう一人の鬼平

逢坂剛の「平蔵の首」を読了した。本書は、火付盗賊改方長官長谷川平蔵、すなわち、鬼平を主人公とした6篇からなる連続短編時代小説集である。  平蔵の顔:老盗賊黒蝦蟇の麓蔵は、実弟赤岩の国松が平蔵の手打ちにあった恨みを晴らそうとし、かつて実の娘同然に可愛がり、今は平蔵の手下になっている美於を味方に引き入れようと画策した。盗賊仲間には、平蔵の顔を見知ったものは誰もいず、美於に首実検させる腹積もりである。…

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ずっと温めてきたのか逢坂版平蔵。

逢坂剛の「平蔵の首」。とうとう自身で長谷川平蔵を描くことになった。6話からなる連作短編の捕物帳。 帯封によれば、『父である挿絵家・中一弥氏が「オール読物」連載中の「鬼平」に挿絵を描いていたことから、長年にわたり読者であり続けた筆者が、今度は自ら「長谷川平蔵」を主人公にした小説を書いた。』とある。 思い返せば、筆者が手掛けている「重蔵始末シリーズ」の初巻(2001年)、主人公の近藤重蔵が鉄砲組…