「シーラッハ」の日記一覧

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安楽死の是非

 フェルディナント・フォン・シーラッハの「神」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は戯曲形式で執筆された作品で、安楽死(積極的な臨死介助)の是非を問う作品である。  第一幕:劇の冒頭で、倫理委員会委員長より、討論会開催の趣旨の説明がある。七八歳の元建築家リヒャルト・ゲルトナーは心身ともに健康であるが、最愛の妻の…

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私の好きなもの

 フェルディナント・フォン・シーラッハの「珈琲と煙草」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は、エッセイを主とした四十八篇の小品を収録した作品集である。原題の「Kaffee und Zigaretten」は当に「コーヒーとたばこ」であり、何れも著者の愛好品である。本書の中で著者は、その両者は執筆する時に欠かせない品…

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人はそれを愛と呼ぶか?

 フェルディナント・フォン・シーラッハの「刑罰」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は、乾いた筆致で犯罪を描いた、著者が得意とする短編集である。  「参審員」:有能でありながらも他人に目立たない様に生きてきたカタリーナが、裁判の参審員に指名される。ドイツの参審員は日本の裁判員とは異なって任期制であり、就任を拒否す…

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カルネアデスの舟板

 フェルディナント・フォン・シーラッハの「テロ」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は戯曲形式で執筆された作品で、人間のの生命の重さを問う作品である。  ドイツ空軍のパイロットのラース・コッホ少佐は、2013年7月26日に164名が搭乗するルフトハンザ機をドイツ上空でミサイルにより撃墜した罪により、参審制の裁判で…

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所詮はクズ

フェルディナント・フォン・シーラッハの「カールの降誕祭(クリスマス)」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は著者の短編集第三作である。  「パン屋の主人」:とあるフランチャイズのベーカリーショップの店長は、かつて犯罪を犯したことがある。彼は父親譲りのケーキ店とカフェを経営し、マイスター試験にも合格していた。ある日…

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ある芸術家の犯した罪

フェルディナント・フォン・シーラッハの「禁忌」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は著者の長編第二作である。  本書の主人公であるゼバスティアン・フォン・エッシュブルクは、ミュンヘンとザルツブルクの中間にあるエッシュブルク村で生まれた。エッシュブルク家はその村の領主で、十八世紀に建てられた壮大な邸に住んでいたが、…

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死者は復讐を望まない

フェルディナント・フォン・シーラッハの「コリーニ事件」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした短編集の「犯罪」、「罪悪」で知られている。本書は著者初めての長編であるが、ドイツで現実に存在した驚くべき「法律の落とし穴」がモチーフの作品である。  65歳の退職したイタリア人コリーニは、2001年5月26日に、新聞記者のインタビューを装い、高級ホ…

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ある刑事事件専門弁護士の独白(その2)

フェルディナント・フォン・シーラッハの「罪悪」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士である。本書は、デビュー作「犯罪」に続く、著者の事務所が扱った事件をベースとした15篇の短編を収録した第二短編集である。  「ふるさと祭り」:著者の扱った最初の事件。ふるさと祭りの最中に発生した、ブラスバンドの男たちによる集団暴行。医師の治療で証拠は消滅、被害者は加害者を特定できず。被疑者が黙秘した…

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ある刑事事件専門弁護士の独白

フェルディナント・フォン・シーラッハの「犯罪」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士である。本書は、著者の事務所が扱った事件をベースとした11篇の短編を収録した短編集である。  「フェーナー氏」:生真面目な老医師のフェーナー氏は72歳の時に、悪妻のイングリッドの頭を斧で断ち割って殺害した。彼を知る人は皆、彼に同情した。彼は何故悪妻を殺してしまったのか。  「タナタ氏の茶碗」:不良少…