安楽死の是非

 フェルディナント・フォン・シーラッハの「神」を読了した。著者は、ドイツの著名な刑事事件専門弁護士であり、著者の扱った裁判事件をモチーフとした作品で知られている。本書は戯曲形式で執筆された作品で、安楽死(積極的な臨死介助)の是非を問う作品である。
 第一幕:劇の冒頭で、倫理委員会委員長より、討論会開催の趣旨の説明がある。七八歳の元建築家リヒャルト・ゲルトナーは心身ともに健康であるが、最愛の妻のエリーザベトに先立たれたために生きる気力をなくし、自死を希望している。彼は医薬品医療機器連邦研究所に、国外で臨死介助に用いられているペントバルビタールナトリウムの