2022年04月27日(水)14:47 会員以外にも公開 櫻子 小説 社長と檸檬(完) カーテンを開けると、琵琶湖に雪が舞っている。利休鼠のような鉛色の湖に真っ白な雪が斜めに落ちてゆく。ひんやりとした空気がガラスを通して胸にあたる。 17階の窓から下を覗く。雪は吸い込まれるように地上に落ちてゆく。 けだるい気分のまま、私は雪の落下を眺めていた。 「何を考えているの」 声がして振り返ると、彼が手招きをした。うなずいてベッドにもどる。 「結婚しよう」 「こうなったから?」 「…