2022年05月13日(金)19:51 会員以外にも公開 櫻子 小説 蒼鷺(1) 高野川河畔の桜並木は満開の時を迎えていた。 早朝、散歩する人の影もどんどん多くなっている。一人歩く人、少し間を開けて歩く夫婦、軽やかにジョギングしながら走る若者。 いずれも皆、薄紅に続く桜並木を見上げながら、感嘆している。 解けた片方のウオーキングシューズの紐を踏んで足がもつれたのと同時に、ポケットの携帯電話が鳴った。後から来る人の邪魔にならないように、堤寄りの石のベンチに腰掛けるとスマホに耳…