連載:蒼鷺

小説 蒼鷺(1)

高野川河畔の桜並木は満開の時を迎えていた。
早朝、散歩する人の影もどんどん多くなっている。一人歩く人、少し間を開けて歩く夫婦、軽やかにジョギングしながら走る若者。
いずれも皆、薄紅に続く桜並木を見上げながら、感嘆している。

解けた片方のウオーキングシューズの紐を踏んで足がもつれたのと同時に、ポケットの携帯電話が鳴った。後から来る人の邪魔にならないように、堤寄りの石のベンチに腰掛けるとスマホに耳をあてた。

「もしもし、榮子。ねぇ、緊急に今夜集まって欲しいんだけど、時間とれない?」
元気な美佐子の声が飛び込んできた。
「朝早くからどうしたの?」

「これ