寝入りばな枕辺近き虫の声 　針谷忠郎 　宵闇にドアを開ければ虫集く　　アロマ 　夜の更けてふくらんでゆく虫の声 貫井照子 　虫の声ばったり止みし野天の湯 　西田史郎 　虫の声やうやうにしてしぐれなす 濱田カノエ 　夢に濃くうつつに淡し虫の声 沼田巴字 　古稀にして古今和歌集虫の声 長谷川鮎 　虫の声大都市の闇深めゆく 　稲畑廣太郎 　清か…

　肩寄せてムーミンとゐる春の暮　 小澤徳江 　絵の中のわれに似し人春の暮 　涼野海音 　豆腐屋のチャルメラ流る春の暮　 神山市実 　気がつけばまだ明るくて春の暮 　稲畑汀子 　田舎道長閑に帰る春の暮　アロマ 　春の暮優しい時めき胸にして　　アロマ 　うどん屋の隅に落着く春の暮 　今野節子 　帆船が影絵の距離に春の暮 　牛田修嗣 　梵鐘の音の溶けゆく春の暮 　森紀子…

　ふたりゐるただそれで佳し胡瓜揉む　 渕脇登女 　 一雨去り一雨また来る胡瓜揉み　 角川春樹 　 世を以て黄昏となす胡瓜揉 　藤田湘子 　食卓に夫がゐる夜の胡瓜もみ 　西村和子 夏帽子 　チャルメラのひびく夕ベの洗ひ髪 　仙田洋子 橋のあなたに 　ぬばたまのくろ髪洗ふ星祭 　高橋淡路女 梶の葉 　碧なす黒髪梳いて洗い髪　アロマ 　前に梳きうしろに梳きて洗ひ髪 　山口波津女 良人…