有蓋貨物列車の隙間から、沈んでいく赤い夕陽を眺め、大人たちが「さらばラバウル(ハルピン)よ・・・の歌を聞きながら、いつの間にか眠ってしまった。 どんな場所でも寝むれるのは、子供の特権であろうか・・ 今朝も早くから起きていたので、どんな場所でも熟睡出来た。 朝、目覚めたときは駅のホームに止まっていた。 五条と言う駅だった。哈爾濱駅からおよそ100kmの所である。 ホームには大勢の人が溢れていた。…
1931年9月、「奉天」郊外、柳条湖に於ける関東軍の謀略によって満州事変は勃発し、翌年3月に帝国の傀儡国家「満州国」が「成立」する。 日本人の多くはその一連の争乱を、「帝国の聖戦」と捉えていたようであり、多くの新聞もこれに迎合した。 但し、そんな中でも石橋湛山の東洋経済新報は、まったく違う切り口でこの「事変」を扱った。「満州国」建国直前の、2月13日の社説である。 「支那に対する正しき…