さんが書いた連載お茶とマンボと御所の庭の日記一覧

会員以外にも公開

お茶とマンボと御所の庭(5)

風花が散る古都、小路を通りかかると、夢路の君(たおやかな京美人)と女装レジェンド(御所で野点の有名人)が軒の下で立ち話をしていました。 夢路の君はあいもかわらず60歳前後の感じ。 レジェンドも矍鑠としている。 あなたも歳を取らないないわねぇ。 いえいえ、そんな、、、。 私92歳になりましたぇ、とレジェンド。 夢路の君ははんなりと微笑んでいた。 これ見て、大枚はたいて買ったの。 豪華でしょ、…

会員以外にも公開

お茶とマンボと御所の庭(4)

女装の有名人さんのご近所に、たおやかな京美人が住んでいました。一流企業の社長さんに囲われてはるとの京雀の噂でした。 お歳は60歳前後、いつも着物を着て、白い和装エプロンをしてはりました。髪はアップにしていて、そうそう竹久夢二の絵の中の、黒猫を抱いている美人そのままの人です。 この人が夢路のモデルかもと思うほどでした。 不思議なことに、京美人は何年経っても歳をとらず、ずっと60歳前後のまま…

会員以外にも公開

お茶とマンボと御所の庭(3)

子どもが幼稚園に行き出すと、1週間のうち何度か風月堂へ行くことになった。 その頃、染花を作っていたので、友人達とお茶会を兼ねて打ち合わせをしていた。 一番奥の席に、いつも、ターバンを巻いたインド人の人と年配の紳士が紅茶を飲んでいた。なにか商談をしているらしくて、テーブルの上には数冊の分厚い本がのっていた。 私達も賑やかだったが、インド人の人と紳士も賑やかで、声高に笑ったり話をしたりしていた…

会員以外にも公開

お茶とマンボと御所の庭(2)

京都に路面電車が走っていた頃、一人の女性が降りてきた。 真っ赤なタイトのミニスカート、それも膝上30センチ、申し訳程度の長さで腰を隠していた。 細く長い脚は黒の網タイツで覆われて、足には真っ赤なハイヒール。 上着は白いタンクトップで、首には長いネックレスが三重に巻かれて光っていた。 レース編みの黒いロングベストはミモレ丈で、歩くたびに揺れた。 大きなつば広の帽子を斜めに被っている。つばは…

会員以外にも公開

お茶とマンボと御所の庭(1)

長女が生まれてしばらくした時に、友達が来て、新しい喫茶店みたいなのがあったから行こうと誘ってくれた。 閑静な住宅地の中に、広幅2枚の大きな暖簾を掲げた普通のお宅だった。 生成りの暖簾には西洋茶処だったかな、喫茶処だったかな、流麗な文字で大きく染めてあった。記憶が曖昧でごめんなさい。もう40年高く前の事なので。   玄関前には、大人の背丈ほどの薄の叢があって、穂が風に揺れていた。 どうぞと言…