「公」と「私」

山崎豊子著『運命の人(二)』文春文庫、読了。
 主人公は国家公務員法11条の、職務上知ることができた秘密を洩らしてはならないと定めた国家公務員に対して、そそのかし又はその幇助をしたという罪で逮捕、起訴される。
 国家の国民に対する裏切り行為を暴かれたからといって、それを個人的な男女の関係に矮小化し報復・断罪しようとする国家権力。男女の双方には家族があっても、そんなものは公権力をもって蹴散らしてしまう。守るべき取材源を守秘できなかった記者の落ち度もある。
 公開されるべきものが秘密にされ、秘密にされるべきものが公開された事件。官憲は、「情を通じた」という二