素浪人の『万葉集漫談』(145)…帰国できなかった遣唐使と、帰国した真備の運命。

(145)大船に 真楫(マカジ)しじ貫(ヌ)き この吾子を
          韓国へ遣る 斎(イハ)へ神たち
        巻十九・4240 藤原太皇后(光明皇太后)
大意・ 大船の舷の左右に楫をずらりと装備し、この親しき子を遣唐使として旅だたせます。どうぞ春日野の神様たちも、大事にお守りください。(751年)

解説・第10次遣唐大使藤原清河の父は、藤原四兄弟の一人である房前(光明皇后の兄)です。光明皇后は房前の妹ですから、清河は甥になります。光明皇太后の神々への祈り(751年)もむなしく753年、清河は阿部仲麻呂とともに暴風雨に遮られ、唐に舞い戻