『ゴヤ?、マドリード・砂漠と緑』

堀田善衞著『ゴヤ ?マドリード・砂漠と緑』集英社文庫、読了。巻末の解説をフランス文学者の鹿島茂先生が書かれているが、著者堀田善衞の文学的テーマは、「人と社会」あるいは「人と時代」だとある。即ち、一人の人間に視点を置き、その人間の生きた時代と社会を描くと同時に、社会(歴史)の側から逆に人間を照射するというのが、著者が生涯をかけて追い求めた創作態度であるというのである。
 そしてこれが成功するかどうかは、ひとえに人物の選択にかかっており、その意味ではゴヤは社会的地位が絶妙であり、強烈な野心を武器に下層中産階級から身を起こして宮廷画家にまで階級移動幅も大きく、