素浪人の『万葉集漫談』(172話) …ヒグラシの鳴く生駒山を越えて。

(172) 夕されば ひぐらし来鳴く 生駒山(イコマヤマ)
       越えてぞ我が来る 妹が目を欲(ホ)り
         巻15・3589 秦間満(はたのはしまろ)

解説・ 夕暮れとなると、ひぐらしが鳴く淋しい生駒山です。いま、私は愛しい妻に逢うべく、暗くなるこの生駒山を越えて大和への道を急いでいる。…という意味の歌です。
・目を欲り→ 一目会いたいと思って。 
・ひぐらし→蜩、セミ科夕暮れ時にカナカナ…と美しい声で鳴く。

遣新羅使任命が2月、難波出港が6月。その出港までの僅かな休暇を生かして、我が家を目指す男の家には、愛しい妻が迎えてくれた