素浪人の『万葉集漫談』(187話) …心の故郷へ!わが家へ!

(187) 旅ごろも 八重着重ねて 寝(イ)のれども
     なほ肌寒し 妹にしあらねば
  巻20・4351 上丁玉作部国忍(タマツクリベノクニオシ)

解説・ 旅衣を幾重にも重ねて横になるのだが、やっぱり肌寒くって仕方がない。衣は所詮、愛しい妻ではないのだから。の意。
 ・寝のれども→寝ぬれどもの東国訛りです。
 ・上丁→防人の階級の一つ。
作者は上総(千葉県木更津市近郊か)の人ですが、避難所で毛布にくるまって震えている東北関東大震災の多くの避難民の方々の姿と二重写しになって、胸が痛みます。妻を暖かい布団や、故郷の寝具に置き換えてみると、何とも薄寒