闇夜に聞える鐘の音。…素浪人の『万葉集漫談』(201話)

秘めやかな乙女の恋心を、かくも美しく、かくも優しく歌に詠んだ笠郎女の瞳が千年の時をこえてじーつと、平成の男女のメール交際を見つめているような…。

(201) うつせみの 人目を繁み 岩橋の
          間近き君に 恋ひ渡るかも
           巻4・597 笠女郎(カサノイラツメ)
解説・ 周囲の人様の目が多いのを気にしまして、すぐお傍にいらっした貴方に声をかけることもできず、またこうして密かに家持さまへの恋心をひとり募らせております。…という切ない乙女の恋心の歌です。
 ・うつせみの →「人」の枕詞で世間一般 →周囲。
 ・石橋の →「