傷心の心を抱いてついに古里へと旅立った、笠郎女。…素浪人の『万葉集漫談』(202話)

・ついぞ思っても見ないことでした。傷心を抱いて、昔住んだこの故郷にまた帰って来ることになろうとは…。

こころ熱く大伴家持に恋文を寄せ続けた笠女郎でしたが、ついにあきらめて、奈良の都を後にしたのでした。次の歌が彼女が家持に寄せたその恋歌です。

(202) 心ゆも 我は思はずき またさらに
        我が故郷に 帰り来むとは
                巻4・609 笠女郎

笠女郎は笠金村(万葉第3期の宮廷歌人として著名)の身内説もありますが詳細は不明です。笠一族は吉備地方、瀬戸内一帯に勢力のあった豪族でした。

大伴家持は天平3年7月に父の