亡妻に号泣の人麻呂…。名歌200選(56) 素浪人の『万葉集漫談』248話

柿本人麻呂の生涯はあまりに謎が多く、多くの万葉学者や歌人、そして小説家たちの想像や推論、仮説の様々であることにも驚きます。

「天飛(アマトブ)ぶや軽の道は我妹子(ワギモコ)が里にしあれば…」(巻2・207)と歌いだす妻を亡くしたときの有名な「泣血哀慟歌」(キュウケツアイドウカ)という長歌(5・7・5・7…5・7・7の形式)があります。
共に棲んだ「軽の里」(畝傍町大軽和田・『万葉秀歌』斎藤茂吉)の妻の死を使いの者に知らされ、その妻の面影を訪ねて「軽の巷」を彷徨う人麻呂像が浮かび上がります。
「妻を求めて彷徨い歩くが、道行く人に妻と似た人はなく、その切な