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よくあるご質問

4、米子に向かう

倉敷駅で駅弁を買い、12:10発の特急やくも11号に乗車。瀬戸内から日本海に向けて北上、米子には14:13着の予定。新婚旅行のときもこの伯備線だったが、旅行社の手違いで特急指定券が翌日になっていると、検札に来た車掌さんに教えられたことを思い出した。
 あの時と同じように、指定席は空席が多い。弁当を拡げて缶ビールを飲みながら、ときどき線路に寄り添って流れる川と迫り来る山の緑、開けた空間に点在する集落の屋根の黒や茶色の瓦と白壁を目にし、広告のない素朴な景色の新鮮さに気づかされたものだった。
 何時しか川の流れが逆になり、列車の進行と同じになっていた。分水嶺を越したのだ。
 ふと6月4日に亡くなられた尊敬する上司だった、N・Tさんのことを思い出していた。19歳の親子ほどの年齢差があったが、定年退職後も何度もお手紙を戴いていた。
 貴兄と、退職後は対等な友人として私を遇して下さった方で、いつも恐縮していた。
 大学から兵士として日本海のM市に配属され、原爆投下(今日は、まさに原爆記念日)後の広島で片付け作業に当たったそうで、強烈な匂いとともに当時を思い出すと、長年、辛い偏頭痛に悩まされ続けていたという。そのN・Tさんの故郷は、井上靖の小説『通夜の客』の舞台となっていたところだと、一緒に出張したときに話してくれた。
 小説『通夜の客』の中では「鳥取県と岡山県に近い1200mの高原の小さな村」と表現されているが、井上靖は昭和20年6月18日に、鳥取県日野郡上石見福栄村神福(現在の日南町神福太田203番地)に家族を一時疎開させるべく鳥取に向かっている。実際の地図を見ると日南町神福には「井上靖記念館野分の館」があると表示されている。
 井上靖の作品は20代の初め頃、ヘッセやシュトルムとともにずいぶん好んで読んだ。私の恋愛観の輪郭を形成しているのかもしれない。愛の憂愁、生の孤独といったものを色濃く感じさせる井上作品には、品位がある。つまり不倫を描いても、そのロマネスクな葛藤には倫理的な抑制が働いている。『あした来る人』の老実業家梶大助や、『氷壁』の常盤大作のような、作者の理想像と思われる気持ちのいい紳士を脇役に登場させるなど、精神の健全性が感じられるからだろうか。

 2時間余りで米子着。ニュースでは新潟が豪雨で大変な被害が出ていると報じていたが、米子は快晴、大変な暑さであった。晴れ女というSさんのおかげで、雨には当たらない。
 駅前から路線バスで、皆生温泉「皆生シーサイドホテル」へ。5人のグループが集合時間に遅れるわけには行かないと、F夫人が配慮しひと列車早いものにしたのだった。
 4組のカップル、叔母・姪ごさんで参加したドイツの旅のときにはいなかったわが孫と同じ、姪ごさんの3歳半のゆうや君と、叔母さんのお嬢さんも3年前の札幌に続いて参加。そして今回初めてのSさんという、13名のメンバーとなった。
 ゆうや君の弟が9月に、わが二人目の孫が今月誕生予定で、この旅でも私はじいじを。
 ホテル5階の部屋の下は砂浜で、波避け堤防の手前では子どもを遊ばせる親子連れで溢れていた。ひと風呂温泉に浸かって汗を流し、懇親会に備えた。

 釧路市に鳥取という地名がある。鳥取県人が入植して開墾した地で、鳥取神社もある。
 北海道の地名はアイヌ語の音を当てた字によるものが最も多いが、本州からの入植者が故郷を偲んで命名した土地も多い。新十津川町や北広島市など、新・北と冠をつけて。
 鳥取の地名の由来は、垂仁天皇の皇子・誉津別皇子(ほむつわけのみこ)は、なぜか成長しても言葉が話せず、天皇は残念に思いながらもとても可愛がっていた。
 ある日、大きな白鳥が鳴きながら群れをなして飛んで行ったのを見て、皇子は初めて言葉を発した。それは「あれは何という鳥か」と言われたように聞こえ、天皇は驚くとともに大変喜び、天斎栲河挙(あまのゆたかわな)に、この白鳥を捕まえる役を命じた。
 鳥取郷は久松山麓一帯の平野部であったと考えられ、この地に大和朝廷に直属していたといわれる職業集団の一つ(鳥を捕獲して朝廷に献上する人たち)の名称である「鳥取部(ととりべ)」という古代部民がいたことが、この郷名の由来といわれている。
 鳥取を含め、中国地方の「鳥」と付く地名を結ぶと、白鳥の帰来する北北西のコースに一致すると、本を読んでメモしていたが、そのメモが見つからずに朧なのだが・・。

 18:30、一堂に会して一年ぶりの懇親会。美味しい地元料理に舌鼓を打ち、元銀行支店長のOさんの巧みな話術に笑い転げ、その周りを走り回るゆうや君の存在は、会全体を和やかなものにしてくれる。一旦各自部屋に戻って、シーサイドの窓辺で花火を楽しんだあと二次会へ。
 いよいよ明日から、マイクロバスでの観光が始まる。

カテゴリ:ニュース・その他

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