吉原の楽しみ方マニュアル

松井今朝子の「吉原手引草」を読了した。本書は、当代きっての花魁であった舞鶴屋の葛城の失踪に纏わる謎について、正体不明の「客」が、吉原に係わる16人(最終章の「客」自身の証言等を含めると18人)の関係者にインタビューする形で進行する。なお、本書は、第137回直木賞受賞作品である。
 本書は全て一人称で書かれており、「客」の発した言葉は、最終章まで、直接的には書かれていない。最初の数章では、関係者は葛城について、「例の騒ぎ」があったとは言うが、何があったのかは明言しない。謎の「客」が、伝手を辿って聞いて回ると、葛城の人となり、日常の振る舞い等が明らかになって