遥かなる御嶽山の威容

夏川草介の「神様のカルテ 2」を読了した。著者は、長野県の病院で地域医療に従事する現役の医師で、前作の「神様のカルテ」により第10回小学館文庫小説賞を受賞している。本書では、前作に引き続き、信州松本の本庄病院に残り、地域医療に従事する主人公栗原一止(イチさん)の苛酷な日々、愛妻の山岳写真家榛名(ハルさん)を始めとする周囲の人々との心の交流が描かれている。物語は、イチとハルが、厳寒の信州王ヶ頭で木曾御嶽山を拝するところから始まる。
 第一話「紅梅記」:本庄病院に東京より、一止の同級生で、「医学部の良心」と呼ばれた血液内科医の進藤が赴任する。一止と進藤は、現