古典ミステリーについての薀蓄

法月綸太郎の「ノックス・マシン」を読了した。著者はミステリー作家で、いわゆる新本格派の代表的作家である。本書は著者には珍しく、ミステリー風味のSF短編集である。
 「ノックス・マシン」:時代は2050年代後半、文学は最早人間の手を離れ、ノーベル文学賞を受賞した物語生成方程式により創られていた。その時代に、上海大学で時流に合わないアングロサクソン探偵小説を研究していたユアン・チンルウは、博士論文のテーマに、英国の推理作家ノックスが発表した「ノックスの十戒」を選択する。十戒の第五項は、「探偵小説には、中国人を登場させてはならない」である。学位は取得したが、全