パラレルワールドに跨る密室

芦辺拓の「異次元の館の殺人」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家である。本書は「森江春策の事件簿シリーズ」の第22作目である。
 弁護士である森江春策をライバル視する検事の菊園綾子は、先輩検事名城政人の冤罪の証拠を得るために、森江の勧めに従い、放射光研究施設「霹靂X」を訪れ、毒物の分析を依頼する。名城は、検察内部の不正の告発を行おうとした矢先に、殺人事件で逮捕され、有罪判決が確定していた。その殺人事件とは、私立四維ヶ原学園の化学教師の成宮明日美が毒殺されたもので、明日美と接触のあった名城が犯人とされてしまった。冤罪を晴らすには、明日美が犯行