「芦辺拓」の日記一覧

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時を超えた純愛

 芦辺拓の「時の審廷」を読了した。著者の内芦辺拓はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られるている。本書は、弁護士の森江春策を名探偵役としたシリーズの第十二作、「時」シリーズの第三作であり、戦前の満州ハルビン、終戦後の東京、そして現代の日本の三つの時代で起こった重大事件の謎解きが、カットバックの手法で描かれている。  昭和二十四年(1949)年7月5日の…

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未完の名作

 芦辺拓/江戸川乱歩の「乱歩殺人事件-「悪霊」ふたたび-」を読了した。著者の内芦辺拓はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られるている。本書は江戸川乱歩が昭和八年から九年にかけて、雑誌「新青年」に三回掲載されたまま未完に終わった「悪霊」を、芦辺拓が補遺して完成させた作品である。なお、本書の中で、江戸川乱歩の執筆になる部分は字体を変えて表記されている。  …

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古書に憑かれた男

 芦辺拓の「奇譚を売る店」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は古書をモティーフとしたホラーの掌編集である。本書では、古書蒐集に憑かれ、古書店を見かけるとその店に入って毎回古書を買ってしまう語り手が迷い込む、現実と虚構のあわいで出会う幻想怪奇が描かれている。  「帝都脳病院入院案内」:「また買ってしまった」との呟きとともに語…

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ミッション・インポッシブル

 芦辺拓の「大江戸奇巌城」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は伝奇時代小説であり、徳川12代将軍家慶の治世で、妄想に憑りつかれて世界征服を目指す一味の陰謀と対決する五人の少女の姿を描いた作品である。本書は二部構成であり、第一部では少女達の生い立ちが、第二部では少女達が陰謀に立ち向かう姿が描かれている。  ちせは、九戸南部…

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フー・ダン・イット

 芦辺拓の「名探偵は誰だ」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は、少し捻ったシチュエーションによる、変則フーダニットの連作短編集である。  「犯人でないのは誰だ」:私は無料の招待券を貰い、深い山の中にある河畔亭ホテルに休養にやってきた。私は最近、入院中の街金業者の伯父の大坪徳馬から、彼の会社を継げと言われていた。散歩に出た…

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船場で起こった連続殺人事件

 芦辺拓の「大鞠家殺人事件」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は、太平洋戦争終戦直前に、大阪船場で化粧品問屋を営む大鞠家で起こった連続殺人事件を描いたミステリーである。  船場の化粧品問屋大鞠百薬館は、大鞠万蔵が創業したのだが、その問屋が発展するに当たっては、万蔵の妻の多可の寄与が大きかったと言われている。そして、物語は明…

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著者別インデックス:国内(芦辺拓)

1.綺想宮殺人事件 (2010.04) 2.スチームオペラ-蒸気都市探偵譚- (2012.09) 3.奇譚を売る店 (2013.07)   https://smcb.jp/diaries/9256367 4.時の審廷 (2013.09)   https://smcb.jp/diaries/9280096 5.異次元の館の殺人 (2014.08)   https://smcb.jp/diaries…

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紙吹雪に埋もれた死

 芦辺拓の「鶴屋南北の殺人」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書は、ロンドンで発見された鶴屋南北の未発表作品を巡る連続見立て殺人を描いた推理小説で、「森江春策の事件簿」シリーズの第24作目である。なお、本書で解かれるべき謎は、連続殺人の犯人の正体と、鶴屋南北の未発表作品そのものが意味するものである。  森江の法律事務所を訪れ…

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関東大震災が繋ぐ縁

 芦辺拓の「新・二都物語」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家で、ミステリーに対する造詣の深さ、博覧強記で知られる。本書はミステリーではなく、1903年に生まれた二人の日本人が、日本列島と中国大陸を股にかけて活躍する姿を描いた波乱万丈の大河ロマンである。  明治36年(1903年)、東北の寒村で生まれた柾木謙吉は、生家が零落したため、母親の捨て身の働きにより故郷を捨てて東京に出るが…

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名探偵夢のオールスター競演

 芦辺拓の「帝都探偵大戦」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家である。本書は、江戸から東京まで、花の都で繰り広げられる名探偵(目明し)達と犯罪者の戦いを描いたクロスオーバー作品であり、江戸時代(「黎明篇」)、第二次世界大戦前(「戦前篇」)、そして戦後(「戦後篇」)の三篇からなる。本書の各篇は、ストーリーそれ自体がメインではなく、登場人物の多彩さ、著者の博覧強記ぶりを楽しむものである…

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日本人諜報員との秘められた恋

 芦辺拓の「楽譜と旅する男」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家である。本書は、古今東西の散逸した楽譜を探し歩く楽譜探索人の探索の成果を描いた連作短編集である。  「曾祖叔母オパールの物語」:100歳を目前にしたオパール・コートランドは、ロンドン近郊のベッケナムにある広い敷地に立つジョージアン様式の広壮な邸に住んでいる。彼女は生涯独身で、両親が亡くなってからは、使用人を除き、一人で…

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パラレルワールドに跨る密室

芦辺拓の「異次元の館の殺人」を読了した。著者はいわゆる新本格派のミステリー作家である。本書は「森江春策の事件簿シリーズ」の第22作目である。  弁護士である森江春策をライバル視する検事の菊園綾子は、先輩検事名城政人の冤罪の証拠を得るために、森江の勧めに従い、放射光研究施設「霹靂X」を訪れ、毒物の分析を依頼する。名城は、検察内部の不正の告発を行おうとした矢先に、殺人事件で逮捕され、有罪判決が確定し…