メリークリスマス  (2)

男は車が途切れるのを待って車道を向こう側へと小走りに駆けた。
そして、女の子の前に立つと優しく声を掛けた。

「可愛いサンタさん、いったいどうしたんだい?
 トナカイさんとはぐれたのかい?」

女の子は男を一瞥すると又、俯いてしまった。
困った男は女の子の隣に同じように並んでしゃがみ込んだ。


それでなくてもクリスマスイヴの夜だ。
ケーキ屋のショーケースの前に
大の大人と小さな女の子が並んでしゃがみ込んでいるなんて
店からしたら営業妨害以外の何物でもなかったろう。
それでも、二人を邪魔者扱いする者は一人としていなかった。
都会はいつでもそんなものだ。