「短編」の日記一覧

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『一日10分のしあわせ』53:6

これを耳で聞いたんだ。一気に読み終わった『一日10分のしあわせ』を閉じた時、思った。 「全世界で聴かれているNHK WORLD JAPANのラジオ番組で、17の言語に翻訳して朗読された作品の中から、人気作家8名の短編を収録」 どんな国の人達がどんな思いで聞いたのだろう。国は違えど人の求めるものは変わらないと、遠い日本という国を思いながら聞いたのだろうか。 どの短編にも悪人は登場…

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「カフカ寓話集」 池内 紀 編訳

「カフカ寓話集」 池内 紀 編訳 岩波文庫 カフカの短編、掌編を収めたものです。 長いもので58ページ、短いものだと6行のものもあります。 短い作品が多いので30編収めたれおり、平均すると7〜8ページぐらいでしょうか。 全体を通した印象は「やっぱりカフカ」でした。 なんとも言いようのない、スッキリしない後味の、しかも、なんかややこしい感じを受けるものがほとんどです。 やたらと言葉を重ねて、詳…

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羊に恋したオオカミの話

本当は出会っちゃいけなかったのかも知れません。 いや、それでももし ただ出会っただけだったのなら・・・ 羊のアンジーはまだ三歳になったばかりの女の子です。 羊の三歳と言うと人間で言えば18~9歳くらいでしょうか。 アンジーが子供の頃 お母さんはいつも言っていました。 「良いかい? 良くお聞き。  何があってもこの柵を出ちゃいけないよ。  外には乱暴者のオオカミや、ずるがしこいキツネがい…

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契約

糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう濃いようにも見えた。 「何だか不気味な夜だな」 いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。 霊感があるとか、第六感が働くとかそんなことは今までも一度も無かった。 周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。 にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。 いつも近道にしている薄暗い公園の散…

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藤沢周平「橋ものがたり」

橋をめぐる短編が10作。場所は江戸の庶民が暮らす界隈。橋は人々の往来に欠かすことのできない存在であり、メインストリートでもあった。登場人物のパターンはほぼ同じで、水商売に身を落とした女とひょんなきっかけから知り合う男。女は自分の境遇から男の好意にふさわしくないと身を引こうとするが、男はそんなことを乗り越えて女と一緒になることを望む。たいていの話が男の一途さに女の気持ちにも軟化に兆しが見えて、ほの…

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「ほとほと」 高樹のぶ子

「ほとほと」 高樹のぶ子 毎日新聞出版 毎日新聞に掲載された短編集です。 歳時記風に四季の季語を題にした短編が二年分24編収められています。 それぞれは短いのですぐに読めます。 帯にあるように死と生が交差するときを情緒豊かに描いています。 例を挙げると 「秋出水」 洪水、山崩れの後、治水され穏やかになった谷川で恋人との思い出の品を見つける話です。 現実と幻が入り混じる心情が秋の渓流の風景と…

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「短編傑作選・すずの爪あと」(乃南アサ)

図書館から乃南アサさんの「短編傑作選・すずの爪あと」を借りてきました。私はとてつもない遅読です。 1日で5冊を読むなんていう人もいますが、私は早くて5日で1冊。遅いことの言い訳として、「1日で5冊も書ける作家がいるだろうか。私はかみしめて読む」ことに。ただし、読んだことが血肉になっているかどうかは不問にしています。

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迷い星 7  〜七夕ストーリー〜

カラオケ大会だとか地元の学生バンドの演奏だとか 賑やかに七夕のイベントも進んで八時を過ぎた頃から抽選会が始まった。 「なぁ、何て書いたんだ?」 晃がそう言ってニヤニヤ笑いながら訊いてきた。 「何だって良いだろ?」 どうせ当たる訳はないと思って書いたものの こいつにだけは知られる訳にはいかないと苦笑した。 ステージ上での抽選会は地元FMの人気DJ氏が司会を務めていて その傍らにはおそら…

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迷い星 3  〜七夕ストーリー〜

「なぁ、どうせ毎日朝から晩まで就活をしてる訳じゃないんだろ?  きっと気分転換にもなると思うし、何より人助けだと思ってさ。  週に二〜三日で良いから、ちょっと手伝ってくれないか?」 もう三十一、二年前の事だ。 卒業前に就職が決まらなかった俺は 地元に戻って一年間就職浪人をしていた時に 晃の誘いでとあるボランティアの手伝いをする事になった。 そんな或る日、その日の仕事が終わって帰ろうとしてい…