母の勘と愛

秋吉理香子の「聖母」を読了した。著者はミステリー作家である。本書は、幼稚園児の連続猟奇殺人事件を描いたサスペンス・ミステリーである。
 46歳の保奈美には、3歳になる娘の薫がいる。彼女はその年になって娘を抱くことになるとは思ってもおらず、娘を溺愛していた。保奈美は多嚢胞性卵巣症候群で、自然に妊娠ができない身体であったため、長い不妊治療の末に娘を産んでいた。保奈美は、近所の東京都藍出市でおきた幼稚園児殺害事件の報道に心を痛めていた。保奈美は長かった不妊治療のことを思い出し、薫を絶対に殺人犯から護ろうと決意する。
 事件の被害者は4歳の男児矢口由紀夫で、近所