森の匂い

宮下奈都の「羊と鋼の森」を読了した。著者は福井県在住の小説家で、ピアノの調律師の成長を描いた本書で、2016年、第13回本屋大賞を受賞している。
 北海道の山村で育った外村は高校二年生の17歳の時、偶然、体育館においてあるピアノの調律に立ち会うことになる。調律にやって来たのは、近所の楽器店の調律師の板鳥である。ピアノについては何も知らない外村だったが、板鳥の調律するピアノから、立ち上る森の匂いを感じた。ピアノの音に魅せられた外村は楽器店を訪れ、板鳥に弟子入りを乞うが、板鳥は、自分は弟子を取る様な分際ではないとし、外村に調律の学校へ通うことを勧める。意を決