乙川優三郎の「芥火」。

★3.5 5つの短編集。江戸に住む男や女の生き方を問う物語。

人はそれぞれに家族を持っても、最後は己個人の孤独な世界に行き着く。過去を振り返り、未来を見つめ、そして何に心の安らぎを求めるのか。

何が好きなのか、どう生きたいのか、価値観は皆異なるのだ、人それぞれである。

5編とも精緻な描写でいい物語なのだが、好みは次の2編。

「夜の小紋」は着物の図案や型彫の世界に就きたかったが、兄の急逝で稼業を継がざるをえなかった男が、失ったもの大きさに気付く。

「柴の家」は300石の旗本家に養子入りした男が、偶然に発見した陶工の世界の魅力。

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