天下一の普請巧者

 伊東潤の「江戸を造った男」を読了した。著者は、主として歴史小説、時代小説を手掛ける小説家であり、緻密な時代考証で知られている。本書は、海運航路の整備を初めとし、江戸時代の様々なインフラ整備を行った川村瑞賢の一生を描いたものである。
 明暦3年(1657年)正月、数えで40歳になる材木商の川村屋七兵衛(後の瑞賢)は江戸で明暦の大火に遭い、三男の兵之助を失う。しかし、その大火を商機と捉えた七兵衛は、妻のお脇、次男の伝十郎、四男の弥兵衛を知人の廻船問屋菱屋権六に預け、有り金全てを持って中山道を木曽に向かう。命懸けで雪の桟道を越えて木曽谷に到着した七兵衛は、木