連載:宗教

コヘレトの言葉

伝道の書ともいわれるコヘレトの言葉は、
まさに晩年に至った成熟した賢者の言葉といえるだろう。

「空の空、空の空、いっさいは空である。」
とはじまるこのコヘレトの言葉は、世の中の虚しさを
嘆いたというふうに若い頃はとらえていた。

しかし年相応に年齢を重ねた現在、
この文章は、単にこの世の空虚さを嘆くという一面だけ
でなく、より重層した意味を持つ複雑なものであって、
とても心に染み入るものだなと受け止める。

この空であるという言葉は、なんとも名状し難い
深い意味をもっていると考えられる。
仏教で言う、色に対する空という意味に近い。

第11章はとくに興