忠犬か狂犬か?

 木下昌輝の「敵の名は、宮本武蔵」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、宮本武蔵と立ち会って敗れた男達を描いた、7篇からなる短編集である。
 「有馬喜兵衛の童打ち」:鹿島新当流免許皆伝の有馬喜兵衛は、九州の大名有馬家の家臣であったが、島原沖田畷の戦いで、自らの失策で「童殺し」の汚名を負ってしまう。国を追われた喜兵衛は鹿島新当流を破門され、零落して流離し、いつか播磨に流れ着く。しかも、博徒にまで身を落とした喜兵衛は、胃癌を患っていた。その喜兵衛は、「生死無用」を掲げて決闘の相手を募る、弁助と