「木下昌輝」の日記一覧

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鹿島新当流の秘伝

 木下昌輝の「剣、花に殉ず」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、鹿島新当流を学びながらも、自分独自の剣を求める雲林院弥四郎の姿を描いた時代小説である。  雲林院松軒は、鹿島新当流の開祖の塚原卜伝から一の太刀の奥義を伝授されている。その息子の雲林院弥四郎は父親の下で新当流を修業しているが、一の太刀の秘伝を受ける…

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木下昌輝 の「剣、花に殉ず」

★3.3 細川忠利に仕え兵法を指南したとされる雲林院弥四郎(うじい やしろう)の娯楽物語。 関ケ原の九州戦である石垣原(大分県別府市)の戦いで父の雲林院松軒に従い大友義統の軍で戦い、敵方の黒田軍にいた宮本武蔵と遭遇している。江戸へ出た弥四郎は仲間をつのり雲組という名で辻斬り退治をやっている。資金源は東南アジアに武士を送り込もうとする商人の末次屋。この時弥四郎は部屋住みであった若い光(みつ、…

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戦国に生きる女性達

 木下昌輝の「戦国十二刻-女人阿修羅-」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、長久手の戦い以下、時代の転機となった事件に至る24時間と、時代に翻弄される女性達の数奇な運命を描いた歴史小説の短編集である。  「戦腹」:天正十二年(1584年)四月八日未の刻、妊娠中にも関わらず、小牧山で戦評定に出席していた徳川家康の側室の阿茶は、織…

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妖刀村正の呪い

 木下昌輝の「孤剣の涯て」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、徳川家康にかけられた呪いを解くために、呪詛者を探し出してその首を妖刀村正で刎ねることを依頼された宮本武蔵の姿を描いた、一種の伝奇時代小説である。  物語は大阪の陣の前夜に始まる。戦乱の世はいよいよ終わりを告げ、剣豪宮本武蔵の剣は最早時代遅れになろうとしていた。多数い…

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本能寺の変の真相

 木下昌輝の「戀童夢幻」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、信長、秀吉、家康ら戦国武将に対峙し、陰から歴史を動かした流浪の芸能者を描いた時代小説である。  「乱の章」:織田信長の小姓頭の森乱成利は、主君の信長を慕っているが、衆道(男色)の関係にはなっておらず、そのために信長と親しい男性に嫉妬する。最近も、信長のかつての念者(男色…

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怪しき上稚児

 木下昌輝の「応仁悪童伝」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、心ならずも応仁の乱に巻き込まれ、命を賭して戦わざるを得なくなった少年達の姿を描いた時代小説である。  落書裁きで姉のお輪が殺人で有罪となったため、まだ子供だった一若は、お輪とともに河内の故郷から逃走するが、二人は野武士達に襲われる。お輪は一若を逃がし、公界である堺を目…

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著者別インデックス:国内(木下昌輝)

1.宇喜多の捨て嫁 (2014.10)   https://smcb.jp/diaries/6417285 2.人魚ノ肉 (2015.07)   https://smcb.jp/diaries/7444283 3.天下一の軽口男 (2016.04)   https://smcb.jp/diaries/7085726 4.戦国24時-さいごの刻- (2016.09)   https://smcb.…

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美濃簒奪

 木下昌輝の「まむし三代記」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、戦国三大梟雄の一人である斎藤道三の、親子三代に亘る美濃簒奪の歴史を、新たな視点で描いた歴史小説である。なお、三代とは、道三の父親の松波庄五郎(法蓮房)、斎藤道三(新九郎、利政)、道三の嫡子の斎藤義龍、の三代である。また、物語の途中で、松波高丸に関する逸話が何度か挿入…

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木下昌輝 の まむし三代記

★3.3 法蓮坊、道三2代の美濃の国取物語だが、初代の松波高丸を加え3代の〈国滅ぼし〉をめぐる話が主題である。 「国崩し(フランキ砲)」によく似たことばで、道三の周辺(読者を含め)まどわすが、その着想は面白い。 越前の朝倉氏、近江の六角氏と浅井氏、尾張の織田氏などの影響を受ける美濃という地の特殊性、木曽3川による交易など興味深い話も多い。朝倉宗滴により浅井亮政(長政の祖父)は騙し討ちで小谷城…

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茶々の望んだ婿

 木下昌輝の「信長、天を堕とす」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、神を目指したと言われる戦国乱世稀代の風雲児織田信長の人生を、「恐怖」と「強さ」をモティーフに、新たな視点で描いた歴史小説である。  第一章「天下の野望」:馬廻衆を率いて上京した信長は、京の華美を見て、その地が己の強さを証明する場ではないと考え、目を東国の今川、武…

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多指症の男達

 木下昌輝の「戦国十二刻-始まりのとき-」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、応仁の乱における相国寺の焼亡以下、時代の転機となった事件に至る24時間と、事件を彩る英雄達の数奇な運命を描いた歴史小説の連作短編集である。  「乱世の庭」:応仁元年(1467年)10月2日酉の上刻、相国寺焼亡の十二刻前。足利将軍義政お抱えの庭師の善阿弥…

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心柱構造の誕生と継承

 木下昌輝の「金剛の塔」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、飛鳥、平安、戦国時代と、火災や戦乱で何度も焼失しながらも再建を重ねた、四天王寺五重塔をモティーフとした時代小説である。本書では、聖徳太子の絵姿が刻印された木製のストラップと、スカイツリーのストラップが舞台回しを務める。  序章 技術を『盗む』:大阪生まれで一級建築士の高…

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不沈の鉄甲船

 木下昌輝の「炯眼に候」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、織田信長には物事の本質を理知的に捉える理解力(眼)があったとの立場に立ち、彼の事績を新たな視点で描いた歴史小説の短編集である。  「水鏡」:信長の馬廻り衆の荒川新八郎は、「運ハ天ニアリ、死ハ定メ」を兜の前立に刻み、危険を顧みぬ勇猛さで知られていた。あ…

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木下昌輝 の 炯眼(けいがん)に候

★3.3 信長の周辺に題材を求めた7つの短編集。 「水鏡」は神仏を敬う一方で天罰や仏罰は一切信じなかった信長。馬廻りの荒川新八郎の水鏡に映った死の予言のからくりを解き明かす信長の合理主義。 「偽首」は桶狭間で一番手柄としたのは簗田出羽守で義元の首を取った毛利新介としなかった信長。首を詳細に点検した信長は奪首と知っていたのか。 「弾丸」は信長を狙撃し、竹鋸で処刑されたとされる杉谷善住坊へ…

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異端の天才絵師

 木下昌輝の「絵金、闇を塗る」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、優れた才能を持ちながら狩野派を破門され、土佐の田舎で絵を描き続けた異端の絵師林洞意(弘瀬金蔵、通称絵金)の生涯を描いた作品である。  一章「岩戸踊り」:自らも南画を学んだ土佐の豪商仁尾順蔵は、日本画壇に君臨する狩野派に対抗し、土佐藩の画処を支配する野望を持つ。その…

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児島湾の干拓事業

 木下昌輝の「宇喜多の楽土」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、著者のデビュー作である「宇喜多の捨て嫁」の続編であり、父親直家の意志を継ぎ、領民のための楽土を建設するために奮闘する宇喜多秀家の奮闘を描いたものである。  本書の主人公の宇喜多秀家は、豊臣政権の五大老の一人である。秀家の父親の直家は、暗殺を繰り返した一代の梟雄として…

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木下昌輝 の 絵金、闇を塗る

★3.3 幕末、維新に活躍した絵師・絵金(弘瀬金蔵)の生涯。 髪結いの子として土佐に生まれ、その画才が幼いころから認められ狩野派に入門。江戸へ出て修行し土佐藩家老家のお抱え絵師に。贋作事件を起こして流浪の絵師へ。晩年には土佐に戻り多くの絵を残した。 血みどろの芝居絵などから狂気の絵師とも呼ばれたよう。土佐勤王党の武市半平太を登場させ、革命を一段と煽るには絵金の絵が必要とした点は面白い。 人…

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戦国の六大決戦

 木下昌輝の「兵(つわもの)」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、「決戦」シリーズに収録された六篇の短編に、舞台回しとしての「道鬼斎の旅」三篇を加えた、時代小説の連作短編集である。  「火、蛾。」:三河国刈谷城主水野藤九郎信近は、織田信長に加担した兄の信元と謀り、自身は十郎左衛門と名乗り、今川義元に通じる。藤九郎は義元を騙し、今…

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天下人の終活

 木下昌輝の「秀吉の活」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、人生の転機に立った豊臣秀吉が、単なる「生」ではなく、「活」を選択する生き様を描いた、連作短編集である。なお、本書の各篇のタイトルは、「天下人の〇活」とされている。  秀吉は幼い日吉の時代に、実父の弥右衛門から、人生は単に「生きる」ではなく、「活きる」ことが肝心であること…

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木下昌輝の「宇喜多の捨て嫁」。

★3.5 戦国の3悪人の1人・宇喜多直家の物語、6つの短編からなる。 備前国の領主・浦上宗景の支配下で零落した宇喜多家の跡取りとして頭角を現し、備前一国を統一するまでにのし上がる。 前半では浦上宗景のサイコ的な疑心による暗殺劇を妻や娘を犠牲にしてまで果たす。 領主の命令などで娘4人を政略婚に送り出し、そして後にはその相手を葬らざるを得なくなる。 やるかやられるか、それが戦国・下剋上の世界…