祖母の遺影と遺言状の秘密

 芦沢央の「雨利終活写真館」を読了した。著者はミステリー畑の作家である。本書は、巣鴨の路地裏にひっそり佇む遺影専門の写真館を舞台としたミステリーの連作短編集である。
 本書の主人公の黒子ハナは表参道にある有名美容室のスタイリストだったが、四年間付き合った恋人の高井伸雄と結婚するつもりで退職したのだが、伸雄に妻がいることが判明し、恋と職を同時に失ってしまう。その落ち込んでいるハナの許に、彼女を可愛がってくれた祖母の訃報が届く。祖母の遺言状に不審を覚えたハナは、祖母が生前に遺影を撮影した雨利写真館を訪れるが、そこは生前に遺影を撮影することを専門とする店で、ス