鉄道員の娘

草原の中に鉄道の駅がぽつんとあって、駅舎には鉄道員とその家族が住んでいた。単線だが、一日に一度乃至二度くらい、貨物列車がみすぼらしい駅に止まったり通り過ぎたりする。

駅の名前はイエルバブエナ、直訳すると薄荷だが、確かにその辺りには薄荷草が多く繁茂していた。僕が厄介になっていた家はその駅の真ん前、その荘園の名前もイエルバブエナといった。ついでに言うとその横に図書館があってこれもイエルバブエナと呼ばれていた。まるで薄荷だらけ、そこが僕の南米における最初の住処となった。

ほぼ無一文でアンデスの高原に辿り着いたが、幸いにして町の中心で花屋を出していたインディ