家族が入れない部屋

 伊坂幸太郎の「AX」を読了した。著者はミステリー作家で、本屋大賞と山本周五郎賞を受賞しているが、直木賞候補にノミネートされることを辞退していることで知られている。本書は、「殺し屋」シリーズ最新刊の連作短編集である。
 本書の主人公の「兜」は、表の顔は文房具メーカーに勤める極普通のサラリーマンであり、家庭を持っているが、異常な程の恐妻家であるため、息子の克己に同情されている。しかし、裏の顔は格闘術に優れる超一流の殺し屋であり、殺人に当たって心が痛まない様に、強敵の殺人の依頼を優先的に請け負っている。彼は最近引退を切望しているが、組織は彼の引退を許さない。