犬とアメリカの物語

 ボストン・テランの「その犬の歩むところ」を読了した。著者は匿名作家であり、性別、国籍、年齢等、全てが不明であるが、その文体から、一説では六十代のイタリア系の女性ではないかとも推定されている。本書はギヴ(GIV)という名を持つ犬と、その周囲の人々との関わりを描いた物語である。
 この物語は、元アメリカ海兵隊員であったディーン・ヒコックが語り手である。彼は物語の後半でギヴと巡り会うが、ギヴのそれまでの生活を知るために旅を続けることになる。
 アンナ・ペレナはハンガリー動乱の際にアメリカに亡命し、元ヘリコプターのパイロットでPTSDを患う夫と結婚するが、交通