妻を誘拐された誘拐犯

 伊坂幸太郎の「ホワイトラビット-a night-」を読了した。著者は、ミステリー作家で、「ゴールデンスランバー」により、2008年第5回本屋大賞と第21回山本周五郎賞を受賞している。なお、同作が直木賞候補にノミネートされたが、選考を辞退している。本書は、お馴染の泥棒「黒澤」が仙台で巡り遭った、後に「白兎事件」と呼ばれることになる人質立てこもり事件を描いた作品である。
 事件の一か月ほど前、兎田孝則は誘拐をビジネスとする組織の仕入れ(誘拐の実行)担当者で、新妻の綿子がいる。目的の女性を拉致した兎田は、部下の猪田勝から、組織の経理担当の女性がコンサルタント