連載:日常3

「閉店」

「一個幾らですか?」
「300円」
仕事帰りに同僚に聞いた、農家が出しているお店に寄った。少しでも安い野菜が欲しい。二人いた男性のうち、息子らしい男性が不愛想に答えた。思わず「たけー!」と心の中で叫ぶ。私はその前日、その言葉をすぐ後ろで聞いた。


その日が最終日だった「西武デパート」に行った。何か買いたいものがあったわけではない。ただこれほどの規模のデパートが閉店する最終日を見たかった。もし投げ売り状態で売っていたら買ってもいいと言うサモシイ根性もあった。

尤もその前の日にあの婆様に出会っていなかったら、そんな気にもなっていなかった。私は普段デパート