洛中洛外図屏風

 谷津矢車の「洛中洛外画狂伝-狩野永徳-」を読了した。著者は歴史小説、時代小説作家である。本書は、戦国末期から織豊期にかけて狩野派を率いた 天才絵師狩野永徳の半生と、絵に対する業を描いたものであり、著者のデビュー作である。
 物語は、狩野家の若惣領の狩野源四郎(後の永徳)が、白黒の片身合わせの装束を着た織田信長に、京の風物を描いた六曲一双の屏風を献上する場面から始まる。源四郎は後に魔王と呼ばれる信長に対して挑発的な言動をし、信長はそれを受けて立つ。すると源四郎は、その屏風に纏わる話を語り出す。
 天文17(1548)年、六歳の源四郎は絵の修行をしていたが