連載:年をとるのも悪くない

「年を取るのも悪くない:その②『安心感』」

昼休みを終えてフロアーに戻ると、そこはまるで「天国」だった。マリコさんを中心に三人が歌っている。透き通ったマリコさんのソプラノが響き渡り、絶えず歩き回るマツコさんがソファーに大人しく座っているだけでなく、一緒に歌っている。

「凄いですね」
記録を書いていた同僚に言うと、
「マツコさんがマリコさんに歌ってよと言ったんです」
マツコさんは目が悪いから歌集は持っていないが、童謡なら歌える。

そこには歩けないキミ子さんがいない。いれば必ず一緒に歌う方だ。また寝ているのだ。

おやつのときには全員が揃った。
「これはキミ子さんのご家族がみなさんにと持って来られ