戦国の六大決戦

 木下昌輝の「兵(つわもの)」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、「決戦」シリーズに収録された六篇の短編に、舞台回しとしての「道鬼斎の旅」三篇を加えた、時代小説の連作短編集である。
 「火、蛾。」:三河国刈谷城主水野藤九郎信近は、織田信長に加担した兄の信元と謀り、自身は十郎左衛門と名乗り、今川義元に通じる。藤九郎は義元を騙し、今川軍本軍を桶狭間山に誘い出し、配下の浅井六之助とともにそれを織田軍に通牒する。藤九郎はさらに、甥の松平元康を織田陣営に引き込む。しかし、桶狭間で義元を撃ち取った信