カサブランカが咲いた。花屋で買うことでしか手に入らなかった高価な花が、目の前にある。一週間も続いた強風にリビングに避難させていたものを漸く外に出した。一輪、また一輪と咲いた。窓際に置いたソファーを隣の和室に移す。カーテンは閉めない。すっきりした部屋から、力強い真っ白なその姿が見える。
空をよく見た。足を留めて見たくなるような美しい空が連日続いた。妖しいまでに美しい空の向こうで、平成最大の水害が西日本を襲っていた。
今までだってこうした空はあったはずだと思った。
若い頃の方が「死」は身近だ。自分の容貌や諸々の劣等感、中学生の頃には男の子にモテないと死
連載:年をとるのも悪くない