それぞれの初陣

 宮本昌孝の「武者始め」を読了する。著者はアニメの脚本家出身で、作家としてはSF畑でデビューしたが、現在は時代小説作家である。本書は、戦国時代から江戸時代初期までを彩る七人の武将の様々な武者始め(初陣)を描いた時代小説の短編集である。
 「烏梅新九郎:主人公は北条早雲。伊勢新九郎盛時(後の早雲)は、幕府申次衆である伊勢盛定の子息であるが、姉の北川殿が駿河守護の今川義忠の正室として駿河に下向するのに同行する。義忠と北川殿の間には、嫡男の龍王丸(後の今川氏親)が誕生する。二十一歳になった新九郎が、三度目の上洛の帰途に浜名湖の近くの小川湊まで戻った時、弟で出家