塩断ちの功罪

 宮部みゆきの「あやかし草紙-三島屋変調百物語伍之続-」を読了した。著者は直木賞作家で、ミステリー、時代劇、ファンタジー等、レパートリーの広い作家である。本書は、「おそろし」、「あんじゅう」、「泣き童子」、「三鬼」に続く、三島屋変調百物語シリーズの第五作目であり、著者お得意の江戸怪異譚である。
 本書の主人公のおちかは、川崎の旅籠の娘であるが、彼女に近しい若い男性が二人訳あって亡くなったため、江戸は神田の袋物屋三島屋に預けられている。叔父の伊兵衛の計らいで、三島屋の「黒白の間」でおちかが百物語の聴き手になるという設定は前編までと変わらないが、本書でおちか