秋刀魚焼く細長き器誂えて

 ことしまた秋刀魚を焼いてゐたりけり  今井杏太郎

 しみじみと秋刀魚は無事の味すなり  水野吐紫

 しんがりは間をあけもどる秋刀魚船  遠藤照子

 はてしなき夫婦の枷の秋刀魚焼く  小林康治 四季貧窮

 ひとり焼く秋刀魚はげしきけむりあぐ  片山桃史 北方兵團

 ひとり祝ぐことなり秋刀魚一尾買ふ  殿村莵絲子 花寂び 以後

 ほろほろとにがき脂まで秋刀魚食ふ  石塚友二

 ぼろろんと秋刀魚の胸に骨がある  田中幸雪

 をのこ子の父となりける秋刀魚苦し  岸田稚魚 『負け犬』

 丸々とした秋刀魚焼く夕べ  アロマ

 今回も喰ひそびれた