漫ろ道行くに程良き虫時雨

 ばらばらに鳴いていつしか虫時雨  大塚省子

 まだ夢に戻れるくらさ虫時雨  浅井多紀

 窓に聞く虫時雨はや晩夏にて アロマ

 ゆきひらの耳なほ熱き虫時雨  木田千女

 闇といふ大きな景や虫時雨  山田弘子

 闇深き京の御苑や虫時雨 岡本明美

 一身を耳にして聞く虫時雨  成合よしひろ

 一村の夜の重たき虫しぐれ  雨宮抱星

 一匹が心に入りて虫時雨  小檜山繁子

 虫集く一匹澄んだ音色して  アロマ

 飲食のものが遺品や虫しぐれ  加藤三七子

 駅四五歩出ればまつくら虫時雨  石井とし夫

 遠き電話切れて一人の虫しぐれ  青木