柵向こう茶粥食べつつ鹿を見る

 鹿の音やある夜は川を越えて来る  鳥酔

 鹿に餌を一度にとられ立ちつくす  高浜朋子

 鹿に見えをりてわれらに見えぬもの  後藤比奈夫 紅加茂

 鹿に指ねぶらせ紅葉見てをりし  西本一都 景色

 鹿に乗る神もまします旅路かな  高浜虚子

 鹿のかたちの流木空に水流れ  金子兜太 蜿蜿

 鹿のこゑ明恵は月を浴びゐるか  橋本 榮治

 鹿のにほひはたわがにほひ真の闇  鷲谷七菜子

 鹿のゐる闇濃かりけり万燈会  野上智恵子

 柵向こう茶粥食べつつ鹿を見る  アロマ

 鹿の影とがつて寒き月夜かな  浜田酒堂

 鹿の横顔と鮮明に見え托鉢父