契約

糸よりも細い新月の夜は闇の深さがいっそう深いようにも見えた。

「何だか不気味な夜だな」

いつも通っていて見慣れているはずの辺りを見回しながら俺は呟いた。

霊感があるとか、別にそんなことは今までも一度も無かった。
周りの景色だって特にいつもと何かが違うという訳でもなかった。
にもかかわらず、その夜は何故か自然と帰宅をする道も足早になっていた。

いつも近道にしている薄暗い公園の道を抜けようとしていたその時だった。
黒ずくめの衣装を身にまとった男が突然、俺の目の前に現れたと思ったら
近づいて来るなり俺の顔を下から覗き込むようにして、そしてこう言った。